ダメだし(145−)
「と言う訳でフウと面会したいんですけど?」
「何も言ってないじゃない!」
「許す」
「え、ええ!? それでも規則ぶち破り!?」
「あはは、馬鹿だなあ、マイト」
僕はポーズを決めた。隣から離れて彼女の正面(正しくは彼女から見て少し左)へと向かい、左手を差し伸べるように。この時に腰と右手が上になっているかがポイント。
そして僕がポーズを決めると同時に草薙さんも立ち上がって左右対象のポーズを決めた。
「規則は!」
「破る為に!」
『存在している』
「…………」
ポカンと口を開けるマイト。草薙さんと僕は左手でハイタッチをした。
「やったな輝樹。これでノルマ達成の十人目だ」
「これからもどんどんやりましょう草薙さん!」
「そうだな。今度は俺はトーテムポール型をやりたいんだが?」
「あれですか……。あれは一種の諸刃の剣じゃないですか?」
「うむ。嵌まれば大受けだが外すとこの上なく寒い」
「やった事あるんですか?」
「おうよ、大学でやった、二回も」
「この上なくチャレンジャーですね」
「大技として用いたんだがな、今までの盛り上がりムードが原始運動停滞にまで陥った」
「絶対零度ってヤツですか!」
「ああ。二回目やったら物投げられた」
「100%失敗するダメ技じゃないですか!」
「ああ、難易度−Eと逆に使える者がいない、使ったら神と呼ばれる技だ」
「思いっきりダメですね」
「しかしだからこそやるべきだと思うのだ! 芸人魂に掛けて!」
「芸人だったの?」
『ああ、そうともさ!』
僕たちはまたポーズを決める。トーテムポール型だった。僕が上、草薙さんが下だ。
「…………」
沈黙だった。
「……ダメだな」
「ですね……」
「やはり俺が上じゃないとっ」
「そこかよっ!」
没ネタ。……何も言うなっ。