創作業

 物語を作る、と言うのは、作家において一番必要とも言って良いスキルだ。
 何事も作らなければ意味がない。

 しかし、それを行うと言うのは案外簡単なものである、と私は常々考える。物語の善し悪し、作者の満足、読者のニーズやらなにやらを考えないなら、誰だって作ることが出来る。
 例えば空を飛ぶ物語。突然宙に浮く主人公、主人公は不思議に思いながらも、家の中を探索し、とうとう空へと飛び出した。空を飛ぶ鳥に挨拶、雲に乗ってふわふわと……。
 考えないなら、面白い面白くない考えないなら、整合性や物語の裏づけを取らないなら、本当に簡単。きっと、作家が一番悩むのは、このことについて、〝どう面白くすれば良いか?〟を考えるんから、難しいと言うのだと思う。(実際、私はいつもここで手間を取るし)


 さて、前置きは据え、と言うことで物語の面白さを考察してみようと思う。視点はジャンプなどの少年系で。(青年系はテーマや葛藤、含蓄を重視しやすいので)

 とりあえず、ポピュラーなとこで「生と死」と考えてみよう。暇つぶしに、登下校中に考えた話。

【時は仮想19世紀。錬金術が大いに発達し全人類は不死を手に入れた。望むがままに生きることを許容された人類は、文明を発達せんとしていた……。そこに、一人の男が来た。男は背に何十もの武具を担い、そして村を襲った。不死であるはずの人間は、傷口が癒えることもなく、苦悶の表情を浮かべて死に伏した。それを重く見た統合政府は討伐隊を派遣、百もの越える人間に囲まれ、男は理由を朗々と語らった。「お前らが俺の女を生贄にして、不死を奪いやがった。だから、お前らを殺す」と。かくして、男の悲劇なる喜劇、虚構なる戯曲の調べは弾かれ出した】
(とりあえず、無駄を削ぎ落としてストーリーのみ。男が言う女はどんな人間だったのか、なぜ男が不死者を殺せるのか、なぜ殺すのかは置いておく。とりあえず思うのは、少年誌には向いていない内容。そしてあまりにも壮大すぎること。世界の大きさがどれほどかは分からないが、主人公が男としたら、敵が全人類というのはあまりにも無謀にしか見えないシナリオである。それも、虐殺メインになりそうだから同じ展開が予想される。コンセプトは面白いかもしれないが、いささか斜に構えすぎた内容)

とりあえず、もう一つ。

【ライノレスシティーでは殺人を許容された街である。ここに住む人々は生と死の境を気にせず生き、抵抗はするが命乞いはしないような連中しかいない。盗難よりも、傷害よりも、婦女暴行よりも、中傷よりも、殺人が一番罪としては小さい。むしろ、容認。隣を歩く人間にナイフを突き立ててもお咎めはない。血を撒き散らして、周りの人間が怒るのは、血で汚れた服の弁償代。そんな、街。そんな中に一人の男が入れられた。男はここの人間を異常と思いながらも、ゆっくりと街に感染されていく……】
(異色作風味で。商業でこんなネタ出たら一発でPTAに叩かれそうなやつ。命を命と考えず、死を死と考えず、命に意味はないと、生きるに意味はないと思わせるサイコ作品。とりあえず、こんな作品なんて作者の技術が卓越しているかイカれているかでなけりゃあ書けない(少なくとも、私は無理)。人々の思考は普通なのに、ただ死に関しては無関心なんて、そんなの人間じゃないのに、それを人間として描くなんて、相当レベルが高くないと書けないです。まあ、一般受けはしないだろうし、少年誌ではまず無理っぽい)

 とかとか、考えてみた。こうやって、物語なんて幾らでも書こうと思えば書けると私は思う。体裁もプライドも無視すればの話だけど。作品として完成しているかは別問題だけど。
 だから結局は、創作ってなんだろうねーーーって。作家と名乗れる線引きは何処からなのだろう? 私の中での定義は、自分が認められるか否か、とは思っているのだけどね。