書評

解剖学教室へようこそ (ちくま文庫)

解剖学教室へようこそ (ちくま文庫)

あらすじ:どうして解剖なんかするのか。気味がわるくはないのか。からだはどのようにできているのか。解剖すれば、ほんとうにそれがわかるのか。「動かぬ肉体」から説き起こし、解剖学の歴史を縦軸に、ことばの役割、ものの見方、心とからだの問題など、幅広い視野からヒトという存在を捉えなおす。養老センセイの、ここが原点。

感想。
 解剖学と言う名の歴史を辿った歴史本みたいなものでした。玄人と比べると見劣りはするものの、しかし読みやすい、読める文章を書いてくれるのですらすらと読了しました。ある時代まで人体の構造はただの殴り書きと似ていたこと、そしてそれを発展させたのはダ・ヴィンチであること、また日本での解剖は――と幅も広かったです。
 ただ――と言うよりもこれが大いにであるが――この著者、性格が悪いと言うか、推敲が足りないと言うか、どうでもいい話と皮肉った文章を挟むので読む気が何度も失せました。上から物を言う書き方で、しかもどうでもよかったり説明を適当に打ち切ったりしてくれるからわがまま教授の講義を聞いているみたい。「わかった? わからない。まあしかたがない。そのうち、わかるかもしれない」、と、そういった「他者を見下す視線」がプンプン匂いました。
 もしこれ以外の解剖学の本があるのなら、私は断固、そちらの本をお勧めします。読者を「教えてやってあげてる側」と勘違いするヤツは余り歓迎したくない。