書評

二重螺旋の悪魔〈上〉 (角川ホラー文庫)

二重螺旋の悪魔〈上〉 (角川ホラー文庫)

二重螺旋の悪魔〈下〉 (角川ホラー文庫)

二重螺旋の悪魔〈下〉 (角川ホラー文庫)

あらすじ:遺伝子操作監視委員会に所属する深尾直樹は、ライフテック社で発生した事故調査のため、現地に急行した。直樹はそこで、かつての恋人・梶知美が実験区画P3に閉じ込められていることを知る。だが、すでに現場は夥しい血で染め上げられた惨劇の密閉空間に変質していた…。事故の真相に見え隠れするDNA塩基配列イントロンに秘められた謎。その封印が解かれるとき、人類は未曾有の危機を迎える!恐怖とスリルの連続で読者を魅了する、極限のバイオ・ホラー。
面白い、これ
 なんだか、SFとホラー、近未来ウォーズ、それに準ずる諸々のジャンルを一切合財に詰め込んだら完成した、と言わんばかりの本だった。原稿用紙換算約1600枚と言うムチャクチャに幅が大きいにも拘らず、それでもまだ足らんと言わんばかりのスケールの広さには感嘆の溜息しか出来ない(まあ、所々冗長に感じる部分もあったが)。
 (少々ネタバレ反転)まあ、だが不満があると言えばある。超人化できるようになってから(更に言うなら下巻になってから)と言うもの、綱渡りのような、ハラハラドキドキする部分が希薄になったし、超人化の弱点、と言うものが一旦目立ったのにその後伏線にもならなかったのは消化不良気味。まあなんと言っても骨が砕けても再生できると言うのはどこか良くない安心感を持ってしまったり。出来ればそこらへんなどもなんとかなればと思った。
 世に作家は数えられないほどいるけれど、しかしバイオレンスとホラー、両方の天秤を図りながら戦いを描ける人間は稀有である。そういう意味では久々に、当たりの作家を引いた手応えを感じた。作者の第二作目である「ソリトンの悪魔」と言うものも出ているらしいので、見かけたら財布の厚みがある限りは優先して買おうと思う。