書評
- 作者: いとうせいこう
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1991/05
- メディア: 文庫
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ザケンナこのヤロウ
この頃人の風聞やお勧めに従ってばかりだった為に面白い作品ばかり読んでいただけに、これは久々の壁本(壁に叩きつけたくなる本)だった。
なんだか、流行と製作熱の両方に突き動かされて書かれたような本。この本は1988年に刊行されたもので、ゲームでファミコン版のDQ3が発売した年でもある。それに受けたのかこの話の主軸である人気ゲーム「ライフキング」は妙に現代とは違いアナログで、ファミコン時代を髣髴される描写が目立った。
まあ、そんな事はどうでもいい。そんな事で私は感想の冒頭をあんな言葉で脚色はしない。
私があの言葉で飾ったのは、つまらなかった。ただそれだけの為である。「ライフキング」が話の要点であるはずなのにそのゲームについてはただの子役程度のふれあいと説明しかなされてないし、薀蓄を聞かせるようなワケの分からない単語ばかり並べ立てられる。話の内容それ自体は面白く興味深い(但し、それは1988年に敢行されたことを踏まえてのこと。今で考えるなら余り目新しくもない)にもかかわらず、原稿用紙の薄さが、話の端折り加減が全てを台無しにしている。原稿用紙の厚さが面白さを握っていると言う考えは余り持ってはいないが、しかし某尊敬している人の言葉曰く「メモ用紙に油絵は描けない」。技量が卓越しているわけでもないのにこのページ数の少なさで挑むのは無謀である。
ネタバレになるとも思えないので明かしておくが作者があとがきで「この本は構想から20日程度で書いた」と思わせる文章を書いている。しかし、ふざけんなと。二十日程度で一冊の本を書けるなんて面白さを犠牲にしているとしか思えないし、それに本を読んでもその考えを肯定しているようにしか思えない。
なんと言うか、要点を纏めるなら、展開聖が、物語の起承転結がちゃんと成されていないのだ。もっと面白くさせるよう悪阻も、展開も、起死回生の伏線も貼れると言うのに、それら全てを無視して、キャラをグチャグチャにして物語を終わらせているようにしか思えない。結局、なにが書きたかったのではなく、自身の暴走で書かされた、と言った感じか。
駄作。わたしはお勧めしない。ただファミコン時代の雰囲気を感じたいなら、どうしても暇ならご一読してみればいいかと。