後悔、している。

 上記の文は、今の自分が当て嵌まる。
 今日、自分の幼稚園の恩師である人間が、退職した事の送別会があった。

 その人とは本当に、長い付き合いだ。少し思い返すが、親戚等を除くのであれば、多分一番懇意な間柄であろう。夏の休みなどに手伝いをしたり、自分の進路についての手引きなどをしてもらった。その人が、退職したのだ。理由は、その幼稚園の経営難。リストラみたいなものだ。

 その人を慕う人間は多い。幼稚園で、看板教師と言うべきほど、有名である。あの人の行動によって、正されたりされた子供も多い。いつも奔放に。しかし怒るべき所を怒った。当時は嫌いみたいにも思っただろうが、それでもどこか、懐いてたのだとも思う。そんな、良い教師であった。

 そんな人が、辞めてしまい、今日送別会があったのだ。

 ちなみにその人以外にも、私が知る人が、後二人辞めてしまった。二人とも、私が深く知る人だ。一人は園長。一人はまだ三十も越えていないほどの人。その二人も、辞めてしまった。……そんな人が辞めてしまい、少しだけ、自分の将来が不安になった。しかし、それ以上に、虚無感が心の中にあった。

 送別会に行かないかと誘われた。しかし、私は断った。自分が言える言葉など何も無いと思ったからだ。自分みたいな、まだ養われているみの人間が、なにを言えるというのだろう? 弱卒な自分が、何が出来ると言うのだろう? しかし、それ以上に、私はテレビゲームをやっていて、それに熱中していたから。そんな愚かしい考えが多数を占めていたこともあった。むしろ、それの方が大きかっただろう。そんなつまらない理由で、私は送別会行きを断ったのだ。

 一枚の封筒を、三十分ほど前に貰った。これを打っている今も手元にそれがある。表側には自分の名前が。裏側には、その恩師と園長の名前が記されていた。中には図書券の紙。そして一枚の私宛の言葉。

「○○君 お手伝 ありがとう保育士 頑張ってね」

 たったそれだけの、簡素なもの。だがそれが、無性に心を、締め付ける。今不覚にも、涙が出てきそうだ。そして図書券の方には、五千円分も入っていた。…………罪悪感にも似た想いが、あった。





 私は何もしていない。今日もゲームがしたかったから送別会行きを断ったのだと言うのに、その人たちは私の為に、この手紙と図書券を渡してくれたのだ。






何もしてない。何もしていないと言うのに、あの人たちは……私を……。後悔が、私の中にアタ。自分は何故、ゲームを止めて、行こうと言わなかったのかを。いつだって、暇さえあれば出来ると言うのに……。私は一時の為に、こんなことを……。私は、私は……。







ちくしょう!






 後悔……そんなものをしたって、人は過去に戻れない。次官は常に前へと動き続けている。しかし、それでも私はなぜと言う言葉をとめることは出来ない。いつかはこの言葉をやめるだろう。今の思いを枯化させ、風化し、薄化し、多忙に身を沈めて忘れてしまうだろう。それは前を向こうと思って変えるのではなく、ただ状況に任せて……。ケジメをつけずに、流されて……。私は、ドラマの主人公にはなれそうにない。決して面白みもインパクトもない、起伏すら見つからない人生を歩んでいる。やろうと思えば今だってアクションを起こせる。それでもやろうとしない。衝動で動けるほど、自分が向こう見ずにはなれず、ただ保身と保護の為に、鎖を身に縛り付けている。英雄には、なれない……。
 ただ、愚かにも後悔だけを、ここでする。やろうと思えば今でも会いに行けるだろう。でもしない。あえて、ではない。ただ、動かそうとしないで……。嘲笑いたければするがいい。それでも私は無理なのだ。私の心は錆付いて動こうとはしない。






 ただまは、愚かな一般人として、後悔をさせて欲しい。何もしない人間に、今私は成り下がったと知った。私は、脚本に書かれたように、動けは出来ない……。出来ないんだ。できないんだ。