煙草。

 胸ポケットから直方体の箱を取り出す。外観は、下から七割はビニールで包まれており、上は一片だけで繋がった即席の紙の蓋がある。開くと何本もの円柱型をしたものと、ライターが入っている。そこから箱をトントン、と指の腹で叩き、せりあがった円柱状のを一本と出し、口に銜えた。ライターも取り、片手で風を遮りながら着火。円柱の先端を焦がす。やがてジリジリと紅く燃え出し、紫煙が溢れ出す。それの根付を指で挟み、唇をすぼめて吸った。なんとも言えないものが肺の中を占有する。



 これが、私の喫煙である。と言っても誤解してもらわないで頂きたい。私はこうやって見るが、生まれてこの方煙草を喫煙したことは一度たりともない
 つまり、これはイメージである。煙草を吸う時どんな仕草をするか? それを思い浮かべてシミュレートをしているに過ぎない。だから実際の喫煙者からしたら眉を顰める描写があるかもしれない。