他人を好きだと言ってはいけない。

 一度だけ、中学校時代告白したことがある。その人のことを別段好きであるわけではなかった。ただ、人から「君みたいな人間はパートナーがしっかりした人でないといけないね」と言われたからだ。しっかりした人、と言うことで真っ先に思い浮かんだ子がいた。私は、その日からその子を好きになっていた。
 思うと、愕然とする事柄だ。私は誰かに言われない限り熱心に好きだと言う感情すらも持てないのかと。それは滑稽すら超えることだ。
 それからと言うもの、他人を好きだと何度か思った。しかし、その考えを疑うこともしないといけない。〝それは本当に自分の心から生まれた感情なのか?〟と。好きと考えて、それは他人が好きだと言ったから、他人が自分を好きなのではないかと思ったから、だから好きになったのではないか?と考えなくてはならない。私には自分の気持ちすら分からない。
 そして、私は多分に嫌われ者だ。何かしら我慢できない性分であり、なにかと顔にで、視線が斜に構えている。
 そして、ふと、思うのだ。
 嫌われ者が好きな人間に告白しても良いのだろうか?
 そう思うのだ。告白は、相手が嬉しいばかりでは決してない。それは絶対である。相手を嫌っているのに好きと言われて純粋に嬉しいと思える人間はそういない。
 それに該当する私は、人を好きなる資格はあるのか? ……良いや、そこまでは言わない。その人を好きであると示してはいけないのではないか? そう思う。