終わらせよう、何もかも。

 先日、私はある人間にあった。
 彼は私を呼び止めてようやく気づいたのだが、しかし私は彼の名前を覚えていなかった。
 それを正直に言うと、彼は苦笑し「ひでえ」と言った。謝った。
 でも、顔を覚えていたので、私と彼がどういう付き合いをしていたのかはうっすら覚えていた。まあ、友達の友達。知り合い<彼≒友達、と言ったところか。
 彼は言った。まだ書き続けているのかと。私は苦笑いながら頷いた。
 それを見て彼は続ける。「お前とあいつに誘われていて、俺だけが地道に続けていなくて良かった」と。
 彼は、まだ私とあいつの約束を覚えていたのだと、その時、痛感した。
 彼には書き続けていると言った。ちょうどオリコンがあり、作品も提出したばかりだったから。
 でも、それは完全な一次創作物じゃなかった。
 ……いや、厳密に言うならばそれは私自身が考え上げて作った物語だ。それは否定することはない。
 しかし、それは以前に書いたものをリメイクしたぐらいに過ぎなかった。公には一度も出さなかったものではあったから規定にも背いていないが、私自身がオリジナルコンペのために書いたわけではなかった。
 私は自分に問う。「彼に対して頷いたが。自分よ、お前はまだ書き続けているか?」と。
 否定はしない。でも、積極的に肯定できるかは、疑問だった。