熱さ……

 それを持っていた私は、いまの私のようではなかった。世間についても関心がなく、人の心も理解できず、虐めを虐めとすら判断せず、学校の成績はそこそこに良いだけの、ただの頭の悪いガキだった。
 でも、そんなこと以上に、いまの私よりも純粋だった。悪意も感じれずに、ただ世界が優しさで出来ていると疑わないような、子供だった。少なくとも、過去を反芻する私には、そう見えた。
 その頃の私は、色々と問答を繰り返していた。もっとこうすれば、ああやれば、なんで……どうして・・・…答えの出ない解答に悶々として生きていた。その時だった。友人と一緒に、物を書き始めたのは。
 その頃は、本当に楽しかった。ただ書くことが楽しくて、物語を紡ぐ事に喜びを感じていた。楽しかった。本当に、楽しかった。書くことが、書く事に対してのメリット。デメリットはほんの少しの時間と数十円単位の電力。それだけの、自分が世界で最高の小説を書けるんだと信じきっていた時代だった。
 あの頃の思いは、今は、ない。